「安心・安全・信頼」の時代へ

石村

ことECは特に「安心・安全・信頼」の時代に入った

ECは安心を求められる時代

手前味噌になりますが、当社はこの8月にSSL証明書の審査と発行を事業に組み込む目的でクロストラスト社と資本と事業の提携をしました。この理由は迫り来ている「安心・安全・信頼」時代への対応です。このSSL対応は安心安全信頼の全体からは、未だ未だほんの一角に過ぎませんが、まずは通信の信頼、そしてサイトの信頼、企業の信頼により、まるで信号機のように、緑で安全、赤で危険と「明確な警告表示」がブラウザーより発せられるようになっています。

今年のトピックスでいうと、既にふたつ大きな潮目を迎えたと思います。ひとつはEUのGDPR法です。既知のとおり、これはヨーロッパ国内法でありながらも、日本を含む世界がこの法律に大きく揺さぶられています。ヨーロッパからすれば当然でしょうが、外から勝手に入って来て、情報をどんどん盗む事が出来なくなったからです。言ってみればアメリカへの挑戦状とも言えるこの法律により、外国人が回線を通じて土足で情報に入り込めないというファイヤーウォールが建てられたわけです。事実米国主導のNIC(ネットワークインフォメーションセンター)がらみの事も、これまでは世界中から誰でも閲覧できたような情報にどんどんマスクがなされ、勝手に営業する事が出来なくなり始めています。本質的には実に良いことではないかと思います。

もうひとつの象徴的な出来事は、年初に始まり秋を待たず追認するかのように起きたFacebook離れです。正月早々Facebook社のトップより発せられたメッセージは、個人情報を使い過ぎた広告を反省し自重するという声明でしたが、データを見る限り離反は止まっていません。そんな中で迎えた決算発表は業績がとても良いにも関わらず、株式市場でも前代未聞の20%下落、一晩で14兆円が消えたと報道されました。これは心理的な反応ではなく、同社のデータ保護対策にこれから膨大なコストがかかるからという具体的な理由からだそうです。

そして今年の後半に顕在化して来たのはインドです。インド準備銀行の策定で、これから世界1位の人口になっていく同国では、国内に対してUPIを利用する企業に対するデータローカル化規制という制度と仕組みを策定しました。今後同国でネット決済や認証をする場合は、UPI認証に準拠する必要があり、UPIを利用する企業は決済データ(個人情報)をインド国内に保管することが義務付けられています。これはアップルやアマゾンの排除とも揶揄されていますが、PayPalやWhatsAppも他人事ではありません。これに対応するには認証に準拠してインド国内にデータを保管する必要がりますが、データセンターの建設やその運営はインド企業でなければならないという法律が成立前夜にあります。つまり納税もインドでなければならないという国策です。

 

本質は「アオリ」「ダマシ」「オドシ」からの離脱

ECサイトの脱却すべきこと

おおきな話ばかりをしましたが、本質はもっと身近、ユーザー心理から誘引されているのだと感じます。メールやメルマガのオプトイン&アウトは既にあたりまえになっていますが、最近目にすることが増えてきたのはクッキーの埋め込み許可を確認するサイトです。これこそ身近な変化で、国家の戦いなどではなく、個々人の心理への対応と感じます。言うに及ばずトラッキングやリマーケティングは誰もが慣れっこになっていますが、これにNOと言い出し始めている現れと感じます。8月に発表された米調査では72%(n=1,413のティーンエイジ)が情報に時間を消費させられていると回答しています。正確には「情報企業に時間を消費させられている」です、かなり感情的ですね。余談ですが同調査によれば、未入学までの間に子供がデジタルデバイスを使うことで、自発性が落ちる事と、小学校に入ってからの大人数での授業脱落が、数値で差分あることが立証されています。

このような動きはこの初夏にグーグルよりデペロッパー向けにアナウンスされた「グーグル最適化」ガイドラインにも現れています。約40項目のウェブコーディングの指針が書かれていますが、ひとことでいうならば「サイトに騙しや煽りのコーディングがあったらレーティングを下げますよ」という表明です。これは国内法や国内ガイドラインにある薬事や期限日など定性的なものではなく、ウェブコーディング自体が安全であり、通信的に騙すような事を禁止するものです。例えば見た目はそのサイトであるけれど、実態は違うところにある「i-frame」などがその対象です。他にもCSSやJAVAなど、HTML以外にもガイドラインが細かく示され、正しく安全にコーディングする事を求めています。

このようなユーザー立場からも、「2個買うと」みたいな煽り、「初回1,000円」という2回目以降を示さない騙し、「今だけ」とか「残りいくつ」という脅しは、これからどんどん敬遠されていくものと思われます。そもそも考えてみれば、こういったコピーは昭和な発想かもしれません。

 

自社ECがよりニーズ化すると予測

2大購買スタイル

当社の立場からすると宣伝のようになってしまいますが、モールのようなポイント還元や、順位を競うスタイルは、まさに煽りを産み出す原因とも言えます。またその競争はモールの外でも同じで、前にこのコラムでお伝えした「流通情報量」が「情報消費量」の2倍を超えているという点にも合致します。あふれる情報に追われる事に疲れているのは前項ティーンエイジャーのとおりですし、リマケやリタゲに奔走し、心も財布も疲労困憊しているのは事業者側もおなじではないでしょうか。こういった背景、前提が色濃くなってくると、消費者側から歩み寄ってくるスタイルが主流になってもおかしくないと感じています。まさしく競争からの選択ではなく、消費者が自主的に探し、求め、歩み寄ってくる。これが出来るのが自社本店、公式直販と言われる世界だと思っています。

私たちの考えは、消費と欲求の違いへの着目。文字のとおり消費は費用が消え、欲求は欲が求めています。以上より、生活品は消費それ以外は欲求というのを2大購買スタイルと定め、モールの性質は消費、自社本店(公式サイト)は欲求に応えるのをマーケティングの基本としています。言うに及ばず消費は「より安く・より早く」が求められますが、欲求はこの点が最優先と言えない事がポイントです。

 

まんざらでもなく地政学

ECでいうと物流影響も含まれていましたが、足元わずかこの2ヶ月で何が起きたか。歴史的な酷暑、台風21号では車がゴロゴロと飛ばされるほどの暴風、そして北海道地震と、生活も経営もBCP、サバイバルの真っ只中に居るいう事をリアルに感じました。これも「安心・安全・信頼」社会へ潮目が変わっていく象徴だと思います。例えばですが、早く届けるよりも「確実に」届ける。納品という約束は信頼。品質はもちろんの事、運営自体を地政学レベルから真面目に見直す機会が与えられたと思っています。

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