(作州(さくしゅう)といわれる岡山県の県北。日本海と瀬戸内海のちょうど真ん中にあたる所に、津山市の里公文(さとくもん)地区があります。平成の大合併で今は津山市となりましたが、かつては久米郡久米町といわれていました。その緑深き里山が連なる地に、さば寿司をつくって30年になる、料理・仕出しの美園食品本店があります。
さば寿司といえば、北陸や京都のさば寿司が知られていますが、作州でも、かつては祭りや祝いの席に出る家庭料理として、さば寿司が作られていました。海から遠いこの地に、日本海で獲れたさばが、塩樽に漬けられ、山あいの道を運ばれていました。
その作州名物のさば寿司のネット販売を、美園食品本店では2006年2月から本格的に始めました。ネットショップの運営を切り盛りする専務の榎本正人さんは、作州・さば寿司への熱い思いをこう語ります。)
「さばをシメる酢加減ひとつとっても、作州のさば寿司には、知恵と工夫がたくさんあります。海からは遠いけど、少しでも旨い魚を食べたい、そんな昔の人の執念が感じられます。かといって、京の都のような食に対する気取りはない。その作州の家庭的なさば寿司の味を、ぜひ全国の人たちにわかっていただきたいと思いました」
(実は、作州・さば寿司の「全国展開」は、料理・仕出し店を30年前に始めた、父・卓郎さんの夢でもありました。どこの家でもつくってきた家庭料理を、うまいものを食べたくて料理屋にくる客に出せるのか?まわりではそんな声もありましたが、あえて名物料理として店に出した卓郎さん。そのさば寿司が評判を呼びます。時代の流れとともに、さば寿司をつくる習慣が家庭から遠ざかりはじめていたことが、郷愁とともに受け入れられたのです。やがて、地元のスーパーや百貨店でも扱われるようになります。
ときには、各地の物産展などで販売する機会もありましたが、残念ながら、販路の開拓はそこまで。良くも悪くも「知る人ぞ知る名物」にとどまっていました。)
(その全国展開への壁を乗り越えるきっかけになったのが、正人さんが雑誌で「ショップサーブ」のサービス開始を知らせる記事を目にしたことでした。じつは、8年ほど前に、正人さんは見よう見まねでホームページの制作に挑戦したことがあります。)
「ショッピングカートもなく、ただ実店舗の看板程度のもので、ネットでの注文も少しはあるかと思って、電話とFAX番号を載せてはいましたが、とてもネットショップといえるようなものではありませんでした。そのうちホームページの更新が面倒になって、挫折してしまいました」
(しかし、それから数年すると、世間ではECだ、ショッピングモールだと、ネット通販が喧伝されるようになります。正人さんも「やっぱりやらなきゃ」という思いが募ってきます。やるにしても、商品がさば寿司だけでは弱い。ならばと、当時、空港で売られている「空弁」で評判になっていた「焼きさば寿司」を商品化することを考えます。といっても、そう簡単にできるものではなく、素材の選び方から焼くときの火加減など、完成品にこぎつくまでに、半年かかりました。その苦労を積み重ねた逸品を実店舗で出してみると、これがまた好評。2ヵ月後には、さんまを素材にした「焼きさんま寿司」も作り上げることができました。)
「さば寿司を合わせて、自信作が3品そろった。3品あればセット商品もつくれるし、これで、全国相手のネット通販でも勝負できると思いました」
その確信がふつふつと胸を突き上げてきたときに出会ったのが、「Eストアーショップサーブ」の記事でした。
(「ショップサーブ」に最終的に決定する前に、大手ショッピングモールでの出店も選択肢の一つとして考えてみた、と正人さんは言います。しかし、「価格面、独自ドメインがもてること、それと顧客データを自らの責任で管理できることなどを考えると、やはり「ショップサーブ」できちんと本店を構えたほうがいいという結論になりました」。契約後は、サポート担当者のきめ細かなアドバイスにずいぶん助けられたといいます。)
「サイト構築から商品をアピールする表現の仕方まで、「素人」相手に根気よくつき合ってくれました。商品に対する意見も忌憚なく言ってくれて、うちの押し寿司はセロファンで包装しているのですが、そのセロファンの取り方を印刷物にして一緒に入れたらいいのでは?など、買う側の立場に立ったアドバイスもしてもらいました。アドバイス通りにしたら、これがお客様にとても評判がよくて」
(他にも、オプションの検索エンジン登録サービスなどは、開店時の慌しい時期はどうしてもサイトのつくり込みに専念しなければならないので、非常に助かったと言います。
現在、さば寿司だけでも年間3万本の受注があるという美園食品本店ですが、これからは、メールマガジン配信機能、MYアフィリエイト、ポイントシステムなど多彩なサービスを有効活用して、「作州のさば寿司をもっともっと全国区にしていきたい」と正人さんは言います。
父が果たせなった、全国展開という夢の実現。その熱い思いを胸に、榎本正人さんは、さらなる集客アップのために知恵を絞ります。)